What's The Shellac and Polish?

『 Shellac シェラック 』

 

アンティーク家具の世界ではよく耳にする言葉ではありますが、

一般には聞きなれない言葉だと思います。

 

多くのアンティークショップでもシェラックがなんなのかさえ

知らない方もいるのが現在の日本におけるシェラックの認知度です。

 

シェラックは東南アジア、主に亜熱帯地域に多く生息する虫、

ラックカイガラムシという昆虫が原料です。

 

19世紀頃のアンティーク家具と呼ばれる家具たちのほとんどがこのシェラックを使って

塗装されています。

 

 

これがそのシェラックです。(日本ではセラックとも)

フレーク状になっている事からシェラックフレークと呼ばれます。

光に反射するとキラキラと美しく宝石のようにも見えます。

 

イギリスではシェラックフレークをアルコールで溶かし

ポリタンクに入った状態の商品が販売され使用されます。

 

写真にあるようにシェラックにもたくさんの種類があります。

リストリーで実際に使用しているシェラックフレークは4種類。

ガーネットラック

宝石のガーネットが名前の由来となっています。

ラックカイガラムシの色素を残し、油分だけを取り除いたシェラックです。木色の薄い木材に添付するとほんのりと赤茶色に仕上がります。

このカイガラムシの色素は飲み物の染色や食品着色として、さらに食品・薬品のコーティングにも使われる万能天然物です。チョコレート・ガム・ジュース・ケチャップなど

ワックス成分を含んだガーネットラック

上記のガーネットラックの原型となるシェラック。

色素も油分もそのままに、特質手を加えていないオリジナルです。

ワックス成分を多く含んでいますので、仕上がりが柔らかく、艶もまた違います。

レモンシェラック

ガーネットラックの茶色の色素を脱色させたシェラックです。

色素が薄くなった分、塗装する際に下地の色を邪魔しないので修復の際にはとても重宝します。

スーパーブロンズシェラック

レモンシェラック以上にブリーチし、極限まで色素を落としたシェラックです。シェラックの中で最も高価。

塗膜が非常に硬く、テーブルトップなどの仕上げに好んで使います。

家具以外では

バイオリン・ギター・ピアノなどの木製楽器の塗装、

身近なとこでネイルアート・口紅などの化粧品に使われています。

このように、シェラックにもいろいろな種類があります。

これらを作品に応じて具合の良い割合で調合していきます。

 

シェラック12gに対しアルコール100cc」で1カット

「シェラック24gに対しアルコール100cc」で2カット。

一般にはこのように計算します。

家具塗装に適しているのは2~3カットといわれています。

左から、

アルコール・レモンシェラック・油性ガーネット・ガーネットラック

※アルコールは無水エタノールのような水分が含まれない物が好ましいです。

このようにアルコールで溶かした状態のシェラックがシェラックニス

となります。

 

『 French Polish フレンチポリッシュ 』

 

フレンチポリッシュはシェラックを使った19世紀から伝わる塗装技術で

日本ではタンポ擦りとも呼ばれています。

 

天然の塗料を塗るという面では漆に近いイメージでいいと思います。

本質的に昆虫から取るシェラックと植物から取る漆とは全く似て異なる物だとは思いますが、一番伝えやすい例えでしょうか。

綿を布で包んだものにシェラックニスを染みこませて使います。

キュッと絞ってパッと塗る。

塗る という感覚よりも撫でながらのせていく?のような

非常に繊細で説明が難しい塗装方法です。

 

みなさんが目にする刷毛で塗る塗装やスプレーでの塗装とは異なり、シェラックニスが何ミクロン単位の層しかできないので、数秒から数分で固まります。

 

ですので、塗っては磨き、塗っては磨きを何度も何度も繰り返して

シェラックの層を塗り重ねていきます。

 

一般的な塗料は平均して3度塗りで終わってしまうのに対して、

フレンチポリッシュは同じ厚みに到達するまで、200~300以上の塗を施します。約100倍の時間と労力が必要になります。

 

ニスの層が重なる事によって光の屈折が多くなり、シェラックその物の柔らかい色がプラスされます。

そうする事でアンティーク家具独特の深みのある輝きに近づきます。

仕上がりは物によって様々ですが、シェラックを使ったフレンチポリッシュでなければこのような仕上がりにはなりません。

 

他にもシェラックを使った塗装方法がありますので、ご紹介します。

この方法はシェラックニスの他にベジタブルピグメント(天然顔料)

を使用し、新しく作り直した箇所や、色落ちしてしまった場所に塗装し、全体のバランスを整える作業です。

顔料少量をシェラックニスで溶かし多種筆で木目を描いたり、補修跡を色合わせして消したりします。

こうして描いた上に更にフレンチポリッシュを施すと、周りと馴染んでどこを描いたのかわからないほど自然に仕上がります。

このように、フレンチポリッシュは他の塗装方法にない素材と技術で仕上がるため大変高価な職人技法です。

 

昨今のウレタン塗装と比べると熱に弱い特性がありますが、

100%天然素材ですので、木材の呼吸を妨げることなく、人体にも悪影響がありません。

 

当店ではアンティーク家具の価値を下げることなくこれからも長く、大切にお使い頂くためにシェラックによるフレンチポリッシュ仕上げをお薦めしております。