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〈ANTIQUE Music Stand RESTORATION WORK〉
アンティークローズウッド譜面台の修復
7 min
今回は不慮の事故でバラバラに砕けたアンティーク譜面台の修復事例をご紹介します。
教会で聖歌隊が使う譜面台として使われていたアイテムですが、「貧血」という思いがけないアクシデントによって下敷きになってしまったそうです。美しく繊細な装飾はフレームと共に大破、台座の足元も三本の支えの内一本が根こそぎ折れてしまっています。
――BEFORE 美しい木目が特徴のローズウッド、今ではその希少性から大変高価な木材です。そんなローズウッド材をふんだんに使い作られた譜面台。特に注目すべきは1本の材から螺旋状に掘り出された支柱部分、究極の工芸芸術です。
幸いなことに重要なパーツは紛失する事なく工房まで運び入れてもらえました。今回の修復では既存のアンティークが持つパティナを保ちつつバラバラになったパーツを完全に復元していきます。
一番の問題は譜面を置く板面の装飾が砕け散り接合部が複雑なパズルになっている事。劣化などの木部の亀裂や破損は膨張収縮などの自然現象からなる事が多く、木の繊維にそったダメージが殆どですが今回の様に外部からの力で壊れてしまった物は木組織そのものにダメージが伝わっているため単純な接着では微妙なズレが生じてしまいます。
接合する前の小口処理が最も重要で仕上がりのクオリティを左右します。
芸術性ある美しい装飾なのですが、繊細なゆえにとにかく脆い。軽く力を入れるだけで、ピシッといってしまいます。
しかも、時代が古いだけに以前にも修復された跡があり、指でなぞると細かなヒビや接合面のズレに気づいてしまいます。
気づいてしまうと、直したくなるのが職人の性。後になってこの下手な修復跡を指摘されたくありませんし。破損部分とは別に細かくチェックして以前の修復跡も含め全体を調整しなおします。
表面の0.1mmくらいのズレは指腹で確かめるまでもなく、目に見えて段差ができているのが分かってしまうので横からスポットライトを当て、影を頼りにひとつづつチェックします。
指腹で微妙な起伏をひろい整面しながらバラバラなパーツを慎重に膠で接着していきます。
微調整を重ねながら接合し、完全にフラットな状態にしたのち、染色作業にはいります。ローズウッドはもともと色が濃い木材ですので染色はほとんど必要がないと思っていましたが、2面ある板面の内、1面の板面フレームだけがローズウッドではない類似材が使われていました。理由はわかりませんが以前に修復された跡があったことから想像すると、当時壊れたのは板面のフレーム部分でその部位だけ作りなおした可能性もあります。とにかく、板面フレームをローズウッドの色調にあわせ染色していきます。
染色後、フレンチポリッシュにて塗装を施します。接合箇所が全く分からないように細かく色調整して、仕上げます。
――導管が埋まるまでフレンチポリッシュを施せば板面は完成です。一番の問題点であった接合部が完全にわからなくなり、違和感ないのはもちろんローズウッド独特の風合いとあいまってアンティークの色艶そのものに修復されました。
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